ウテン結構第9回公演－時－

『メトロノームが叫んでる』

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★出演★

岩澤繭【ウテン結構】、
蒼井染、
あきやまかおる、
杉田のぞみ【合同会社A-ZO Jaya】、
田中達也【株式会社Quick】、
新乃舞子、
本堂史子【カリバネボタン】、
吉成豊

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拝啓、雨々アメ（仮）様

はじめまして。初めてお便りします。私は雨さんのお書きになったお話のファンの一人です。このようなお手紙を、劇団ではなく個人の住所に送ってしまってすみません。迷ったのですが、実は私の仕事柄、他人の住所くらいなら調べるのには苦労がなく、お話したい内容的には個人にそっと送らせていただくのが正しいのでは、と考えて、こうしてお手紙するに至っています。公演、いつも楽しみにしています。昨年の「雨の世界」では、雨女についてのお話が中心でびっくりしました。実は私はかなりの雨女で、雨さんの考察には正直、度肝を抜かれました。雨女が辿る悲劇には、客席で涙が止まらなかったです。その次の作品「ストレイシープ」では、方向音痴ばかりが登場していて衝撃でした。私はかなりの方向音痴でもあって、いつまでも迷子から脱出できない皆さんを見て、普段の自分を重ねて目眩がしました。この間の「メメントの森」では、中盤までやっと自分とは関係ない話が続き、安心して見ていましたが、後半にオタクの世界に突入し、椅子から転げ落ちそうになりました。ここまでの告白で想像がつくと思いますが、私はオタクでもあるのです。オタクが亡くなると、そのコレクションを継承するために全国から次々とオタク仲間が集まるエピソードは、この世界に実際にいないと知らない情報だと思うのですが、一体どこでそれを知ったのでしょうか？ 私、いろいろ考えていく内に気がついたのですが、まさか、雨さんは私を知っていますか？　どこかで会ったことがありましたか？ どこか、この部屋の壁に穴でもあって覗いていて、とか、もしくは盗聴器でも仕掛けてあって、私のことを調べたりはしていないでしょうね？ すみません、お気を悪くなさらないで下さい。でも、ここまで来ると、そうじゃないと説明がつかないと思ってしまって、私、想像力が暴走することがあって、それで、どうしてもそれをお聞きしたいと思って、まさか、ねえ、そんなことが出来るわけ、そうは思ったのですが、ちょっと考えて、あれ？って思って・・・、手紙の最初にも書きましたが、私が普段やっている仕事なら、それを悪用すれば、そんなことは簡単かも知れないって思って。ああ、すみません、私なら、私なら、それが出来るって考えて、またあれ？って思って。ってことは、雨さんは、もしかして「私」ですか？ いやいや、すみません、変なこと言って。そんなわけ、私は私ですから、ねえ、あなたが私ですか？だなんて、じゃ、これを書いている私は一体、誰だって話に・・・、あれ？ すみません、私は「誰」ですか？　私、私、は・・・ 実は私、計画していることがあるんです。突然すみません、私は今夜から、雨さんを真似て、お芝居を書いてみようと思っているんです。タイトルは、『メトロノームが叫んでる』、発表になっている次回作のタイトルですね。私、雨さんよりも先に書いて、書いてみて、書き上げて、それで雨さんにそれを送りつけようと計画しているんです。へへへ。もしも、もしも、それが雨さんがお書きになった『メトロノームが叫んでる』と同じなら、ほら、私はあなたなのかも知れません。わー、なんて愉快でしょう。だってそうなりますわよね？ あなたは、あなたは、もう一人の、もう一人の、私。フフフ。アイデアだってあるんですよ、雨女と方向音痴とオタクの世界は書いてしまったのだから、ねえ、残るはアレしかありませんものね。昔犯した、あの罪について。楽しみにしていて下さいね。すぐ脱稿して送りますから。やだ、怖がらなくっていいですよ。私は雨さんのファンです。ファンなんですから、失礼のないよう、心を込めて、背筋を伸ばして机に向かいます。
山田はなこ（仮）

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拝啓、山田はなこ（仮）様

こんばんは。興味深いファンレター、ありがとうございます。私もびっくりしましたし、また、とても参考になりました。実は私は、変なことを言うようですが、この世の中に、私が何人か存在するってことに、うすうす気がついています。日々、街を歩いていると、すれ違ったバスの中に、私を見つけます。逆に私が電車に乗っていると、流れる風景の中に、古びたアパートの窓の向こう側、私がいるのを発見します。だから、きっと、あなたのおっしゃった通り、あなたは私なのかも知れませんね。大抵は、お互いがお互いに気づくなんてないのですが、おかしなことになりましたね。そうそう、次回作、私も頑張って書いていますよ。あなたが先に書き上げると言ったので、負けちゃいけないと急ピッチで私もペンを走らせています。罪について、ええ、そうですね。痛いですね、あの話は。本当、どっちが先かしらね。どっちのが面白いものが書けるかしら。そもそも、本当に、まったく同じものが書き上がったりしますかしら。わ、楽しみですね。それで、私から提案なのですが、その答え合わせは、劇場でしませんか？ 送らなくっても、あなたがご自分の目で、観客席から、自分の書いた世界と、私の書いた世界、どっちがどうだったか、ね、それを判断するんです。ほら、いいアイデアでしょ。私、意外と勝負事が好きなのでワクワクします。劇場で、ぜひ声をかけて下さいね。自分に似た人がいると思いますので、それが私です。その時に答えを教えて。では、劇場でお会いしましょう。
雨々アメ（仮）